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2009/01/20 (Tue) その名にちなんで(著:ジュンパ・ラヒリ 翻訳:小川高義)

続けてジュンパ・ラヒリ。今度は長編だ。これがまた前作を凌ぐ傑作である。
この作品はのちに映画にもなった(私は観てないけど)。
一昔前に「村上春樹を読むとビールが飲みたくなる」なんてフレーズが流行ったけど、『その名にちなんで』を読むとゴーゴリの『外套』が読みたくなる。実際わたしはすぐに岩波文庫の『外套・鼻』を買って読みました。

以下は読んだ時の感想。



『停電の夜に』でのピュリツァー賞受賞は決してフロックではなかった!
ジュンパ・ラヒリは、そのことを軽々と証明して見せくれた。出来映えから言えば本作の方が上だろう。ジュンパ・ラヒリ恐るべし、である。

主人公の名前は「ゴーゴリ・ガングリー」。ベンガル人の両親がアメリカで生んだ子どもである。ロシアの文豪と同じであるその風変わりなファーストネームは、彼の父親が列車事故の際にゴーゴリの『外套』を読んでいたおかけで一命を取りとめたことに由来する。そんな経緯を知らないゴーゴリ少年は自分の名前が嫌で嫌で仕方がない。そこで、18歳になったときに「ニキル」と改名してしまう。こうして、二つの名前、二つの祖国を持った青年ができあがる。そんなニキル/ゴーゴリの成長の過程を追った物語である。

本筋はニキル/ゴーゴリの話であるが、その視点はあるときは母親のアシマの視点に、またある時はニキル/ゴーゴリのガールフレンドの視点へと自在に移り変わり、ニキル/ゴーゴリとその家族にまつわる話やニキル/ゴーゴリとそのガールフレンドたちとの話が淡々と語られていく。ニキル/ゴーゴリがインド生まれのベンガル系移民の子であり、二つの名前を持つということを除けば、誰にでも起こりうる事柄が述べられる。しかし、その誰にでも起こりうる何でもないような日常の出来事を掬い上げる見事さには、私は作家でもなんでもないのに、激しい嫉妬心さえ感じる。

例えば、アシマがアメリカで初めてアドレス帳を買った時のことを思い出しているこんな一節。

アパートに帰ってから、真新しいブルーのページに実家の住所を書き入れた。カルカッタのアマースト街。それからアリポールの婚家の住所。その次に現住所としてセントラル・スクエアのアパートも、忘れないように書いておいた。マサチューセッツ工科大でアショケが使う内線番号も書いた。夫の名前を文字にするのは初めてだと思いつつ、ちゃんと姓まで書いた。アシマにとっての世界はそんなものだった。



また、全編現在形で書き進めているのも本作の独特のリズムを生み出している。訳者後書きで翻訳者がその苦労を吐露していたが、翻訳者の苦労は十分に実を結んでいると言えるだろう。

こういう淡々とした話の場合、ラストをどのように締めくくるのかが気になるところだが、実に心憎いラストをジュンパ・ラヒリは用意している。伏線が最後に活きるこのラストシーンの見事さは是非実際に読んで味わって欲しい。ちなみに、私のあとで読んだ妻もこのラストには感嘆しきりだった。

『停電の夜に』を読んだ人にも、そうでない人にもとにかく読んで欲しい。“力を込めて”お薦めします。
(2004/8/26)



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