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2009/02/16 (Mon) 翻訳とは何か 職業としての翻訳(山岡洋一)

ちょっと古い本のご紹介。お堅い感じの本だが、翻訳の世界に身を置くものとして興味深く読んだ。

以下は読んだ感想。



第1章は同じヘーゲルの哲学書を翻訳した金子武蔵と長谷川宏の訳を比べながら翻訳とは何かを探っていく。「he」を常に「彼」と訳し「she」を常に「彼女」と訳して安心しているのは英文和訳であり、翻訳ではないと斬り捨てる。

第2章では歴史の中の翻訳家として、三蔵法師や村田蔵六(のちの大村益次郎)などを取り上げている。村田蔵六に関しては主に司馬遼太郎の『花神』からその業績を辿っており、「職業として翻訳を目指すものにとって、類書がほとんどないと思えるほど貴重な小説だ」と褒めちぎっている。

その後の章では、翻訳の技術や市場、翻訳者への道などを論じている。但し、主に著者の念頭にあるのは外国語から日本語への出版翻訳である。だから翻訳の技術の話では日本語を書く技術がいかに重要かを切々と説いている。翻訳には日本語から外国語へのものもあるわけだが、これに関しては、例えば日本語から英語であれば英語のネイティブ・スピーカーが行うべきもので、日本人がするべきものではないとハナから相手にしていない。

後半は翻訳業界がいかに歪んでいるかと、業界への苦言に終始している。翻訳者の収入が少なすぎる話、甘い幻想を抱いて翻訳学校に通う人間がいかに多いかという話、そしてそういう人間から甘い汁を吸い続ける翻訳教育産業の話、自宅で出来るから翻訳をしたいというのが実は誤った認識であるという話、翻訳というのは分業には適していないので、下訳者を使ったりするのは逆に効率が悪くなるという話、などなどである。

著者は「翻訳」というものを一面からしか捉えていない(もちろん全ての面から捉えるのは不可能な話だが…)。例えば「翻訳とは、書く作業の全体に対して責任を負う仕事だ。だからこそ、魅力のある仕事なのだ。」と書いているが、産業翻訳の世界では一人が全体を翻訳する方が稀である。まず間違いなく複数の人間で分担して翻訳する。そうしないと納期に間に合わないからだ。

翻訳とは主に外国のすぐれた知識を学び、自国に伝えるものである。それゆえ翻訳というものは生涯を捧げる価値のある職業である。一方で翻訳とは地味で辛く報われることの少ない仕事でもある。翻訳家は自分の担当する翻訳については全責任を負う姿勢が不可欠であり、英語がちょっと得意だからというレベルの人間が簡単になれるものではない。

というのが本書の結論であるが、「私はそれ相応の環境も整え、翻訳を生涯の職業と見定めており、優れた翻訳を生み出しているのだから、もう少し報酬が良くてもいいはずだ。英文和訳レベルの翻訳本がベストセラーになるのは納得がいかないし、翻訳学習者が非常に安い単価で翻訳を請け負い、業界全体の単価が下がってしまうことにはもう耐えられない。」という著者の裏の声が聞こえてこなくもない。


翻訳とは何か―職業としての翻訳
翻訳とは何か―職業としての翻訳山岡 洋一

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